このグラフは、日本で展開されている各種ライブ配信プラットフォームの統計を併せて一つにしたものです。日本から発信しているユーザーがどれだけ視聴されたか(視聴時間換算)を合計し、日毎にプロットしました。
ご覧の通り、視聴は順調な増加を見せています。数値的には、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が 厚生省指定感染症と告知されてからから、2ヶ月ほどで視聴時間が44%上昇しています(具体的には約8000万分/日)。
本来は、日本の2月は例年視聴が落ちるものです。その原因は明確になっていませんが、正月休みが終わり年度末に向かう中、学生・社会人ともに自由な時間が減ることが推定されます。にも拘らず、今年は2月以降も水準を維持しています。
また、2/28 以降, 3/24 以降と2段階的に上昇していることが特徴です。これはグローバルの統計では出ていない上昇点で、日本独自のものとなります。2/28 は日本政府からの学校一斉休校要請が施行された日であり、3/24 はオリンピック中止が発表された日です。これによって在宅時間が増えたこと・通勤通学の時間が減ったことで、ライブ配信を視聴する人口・時間が増えた可能性があります。ただし、日本の社会人にとってテレワーク導入率は低い水準にあり(Engadget 日本版)、どれほどの人口に可処分時間が増えたかは不明です。そのため、COVID-19 と視聴増加には因果関係は証明できないものの、相関関係は見られるとここでは考えます。
ライブ配信は個々のストリーマーにとって、殊に ノウハウ・マインド 無しには実現できない総合芸術です。在宅文化が奨励されている現在、現役のストリーマーは 手法・経験 が蓄積されるのみならず、ファン数も伸ばしています。今後日本政府の緊急事態宣言が解除されて後もストリーマーは継続して活動する可能性が高く、現在の活動が今後のトレンドの布石となりそうです。
補足1. : 今回の成長について、なにかゲームタイトルが一つ爆発的に伸びた可能性はあるでしょうか?
トレンドを説明する時、なにか一つのゲームタイトルに理由を追求することはよくあります。ただ今回、全ての可能性を考慮に入れるというのは中々難しいですが、多分そうではなさそうです。この時期には新作タイトルで『あつまれ どうぶつ森』(任天堂)などが発売されましたが、新作タイトルたちの視聴時間を合計しても上記「国内44%成長」に足る視聴時間の増加には及ばないからです。むしろ、日本国内の視聴時間が全体的に伸びたと言って良いでしょう。
また、グローバルで人気を博している VALORANT(Game*Spark)は日本ではクローズドβテストに参加出来ないため、今回の集計にはほぼ反映されていないと言って良いです。
補足2.:「現在の活動が今後の布石になる」とは何でしょう?
例えば、個人ではないですが、2月8日 - 3月8日に開催されていた LJL(League of Legends 日本プロリーグ, 公式ツイッター)春シーズンの視聴時間は非常に大きくなっています。昨年弊社が集計した Esports Tiers in Japan でも LJL の大きさは群を抜いていましたが、LJL は昨年の同時期に比べて視聴時間が 40% 増加しています。単純比較が難しいですが、2019年と2020年では2月の視聴時間が32%増加しているため、市場全体の増加率よりも LJL の成長率は大きいと言えるでしょう。
元来 LJL は劇場で観客を動員しチケット販売やファンミーティングを行っていたため、今回の COVID-19 に伴う情勢により無観客試合の処置を取ったことはリーグにとって痛手のはずです。それでも在宅ファンを味方につけ、市場の波以上の視聴増加へ繋げたことは、今後のリーグ運営にも追い風になるでしょう。
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